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エリアトラウトにおけるナイロンラインの出しどころ / 礒野寛之
2025.10.10
皆さんこんにちは、トラウトテスターの礒野寛之です。
昨年に鱒ノ糸エステルをリリースしてから、新たなライン「鱒ノ糸ナイロン」の開発に注力してきました。その開発もやっとひと段落。
という事で今回は「ナイロンライン」をテーマにお話できればと思います。
ナイロンラインの特長
まず最初に、私はエステルラインを軸としながらエリアトラウトの世界を組み立てています。
もちろんエステルラインでできる事って、とっても多いんです。でも魚との接点が多いエリアトラウトの世界では「こうやったらもっと良いかも?」というワガママな部分も身近なところで出てくる訳です。
今回の主役である「ナイロンライン」ですが、実釣面での話に絞れば大別してこの2つの強みがあると私は考えています。
それは…“比重とクッション性”。
ナイロンと他素材ラインの使い分け。ナイロンならではのメリットは?
私にとって軸となるエステルラインを使う中でも、硬さ(ハード/ソフト)や号数、リーダーの組み方で色々とアジャストできます。でもその先の世界がまたある。
私はルアー開発を行う立場というのもあり「どのようにルアーを動かし、魚に魅せるか」という事を具体的に考えていきます。その時にラインの比重による軌道の変化は、ルアーのキャラクター性を大きく変えていく要素にもなるんです。
あくまでも私なりの使い分け方なので皆さんの「自分なり」を探していただきたいと思いますが、参考程度に私なりのエステルに対するナイロンライン使い分けについて説明します。
エステルラインの比重が1.38に対して、ナイロンラインの比重は1.14。上イラストの通り、一般的なナイロンラインは水の中で浮きやすい傾向にあります。
この違いによって浮くプラグでも沈むスプーンでも、水中での在り方が大きく変わってくる訳ですが、カンタンに言えばエステルラインよりも上からルアーを吊るすことができる。そのためプラグであればその浮力をより活かしたり。スプーンであれば姿勢を立ち泳ぎに誘導しアクション、スピード、コースと変化を与えられたり。
そして、エステルラインは情報量が豊かで伝達性に優れます。メリットが多い中で、実はそのダイレクト感が裏目に出ることも。
アングラー側に感度として明確に伝わるという事は、その先の魚にもそれが伝わりやすいという事。魚は針に触れた(引っ張られた)という感覚を持ってから暴れ始める事が多いため、言い方を変えればダイレクト感があることによって、掛けるタイミング(バイト)を選びづらく感じるシチュエーションも出てくるかもしれません。
自分にとって都合の良いアタリを選びたい(育てたい)、キャッチ率を安定させたい…そんな意味でナイロンラインは、釣りの幅を拡げていく、そしてより深く楽しむための要素が詰め込まれたライン素材だと思います。
最近はナイロンリーダーとしてエステルラインに組むセッティングも出番が多いですが、その話についてはまた別の機会に。
ナイロンを使う際のタックルバランス、メリットが活きる釣り方やルアーについて
私はこの2つのルアージャンルでナイロンラインを多用する傾向にあります。
スプーン(軌道変化→誘い→バイト処理の一連の流れを組み立てていく)
私の場合「比重」を特に強く意識します。マイクロスプーンを使っていればその影響をより感じ取りやすいかと思います。水中、空中にあるラインをどのポジションに配置するかで、スプーンの泳ぎ方(泳ぐ質とトレースコース)、魚のバイト処理それぞれに大きく影響してきます。
クランクベイト(ルアーの誘いが速いまたは強い→魚のバイトが攻撃的になりやすいケース)
私の場合「クッション性」を特に強く意識します。
スロー方向の微弱なor噛み付くバイトはエステルでやる事が多いですが、強く誘い魚もそれに合わせて強く喰らいつく場合にはナイロンを多用します。
というのも、速く/強く引っ張ってくるルアーに対して魚も攻撃的にアタックしてくると、瞬間的にかなり引っ張り合いっこの負荷が掛かり、バラしに繋がる場合もあるんです。それこそバイトを選べない事でキャッチ率が落ちる時がある。
そんな時にはナイロンらしいクッション性は「魚を怒らせない」ままキャッチまで誘導しやすいので重宝します。
それに加えて、釣りの幅が拡がるよう入力系の釣りにも対応しやすい事に拘りました。
テストを繰り返したNEWライン「鱒ノ糸ナイロン」の特長
さて、遅くなりましたが今回の本題です。
それは開発中の「鱒ノ糸ナイロン」について。
気付けば大量のテストサンプル数で箱からはみ出てしまっています…笑。
ではまず、これを開発依頼した背景からお伝えします。
求めた事は…
「エステルらしい要素が含まれている直感的ナイロン」
その理由は2つ。
例えば、どれくらい引っ張られればアタリとして感知できるか。ルアーにアクションが伝わるか。そのイメージと実際とで大きなギャップが生まれてしまうと、釣りの組み立てには支障が出てきてしまいます。
そう言った意味で、この「鱒ノ糸ナイロン」を開発するにあたってエステルらしさは強く意識していました。極端な話、エステルらしく表現するための限界値を見つけられれば、あとは開発をする上でも整理しやすいと考えたからです。
その為、最初は「製造上で支障の出ない範囲での低伸度の限界を知りたい」という検証のためのリクエストをお願いしました。
そして調整、検証をを繰り返すこと多数…(開発担当の方にはかなり無理をお願いしてしまいました)。そして “一つの突破口”を見つけることができたのです。
そのお陰で、マジックジャークやトップウォーター等の入力系の釣りでの快適性も大幅に向上。
もちろん直結で使えますし、私の場合はショートリーダーを接続して使う事も多いです。
詳細は、発売時期が近づいてきましたらまたご説明したいと思います。
2026年春頃の発売を目指していますので、ぜひ楽しみにしていてください!
それではまた次回。